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平凡な日常の中で思うこと


by hammsamm
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芥川賞評

「ポストライムの舟」 津村記久子 

読んでるだけで息苦しくなるような、
気が滅入って、ずんと落ちていくような感覚になるものの
「私」のどこか滑稽にさえ映る必死さが意地らしくもかわらしくもあり
ぎりぎりのところをうまいバランスで保っている。
そこには「私」たちが口にする関西弁の威力が大きい。
全然たいしたことじゃないかのような、
力強いような、気が抜けるような関西弁の不思議。

工場での単純作業のくり返しの中で
「私」がいちど考え始めると抜け出せなくなる思考の行先がおもしろい。
昼も夜も土日も働いて、家では内職をする「私」が
仕事に対するモチベーションを維持するために
腕に「今がいちばんの働き盛り」と刺青入れたいと考え始めたら止まらなくなる感じ、
しかもゴシック体がいいとか考えてる感じ、
息苦しさを覚えつつ、笑えます。


ここ最近の芥川賞作家で
「おもしろい小説」 を書く人はなかなかいないけれど(絲山秋子くらいじゃないの?)

津村さんは
これからきっとおもしろい小説を書く人だろうと思う。
by hammsamm | 2009-02-27 16:13 |