人気ブログランキング | 話題のタグを見る

平凡な日常の中で思うこと


by hammsamm
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

読書感想文

悼む人」 天童荒太

「永遠の仔」で直木賞逃して
なんでこの作品で受賞?
「永遠の仔」の方がずっと悲惨で壮絶だけど
読み物としておもしろかったのに
(以下ネタバレあり)

死生観なら手塚治虫の方がよっぽど共感できるし
なかなか明かされなかったある男の死の真相だって
焦らして引っ張って出てきた台詞→「きみから生まれたい」にしても
寺山修司の「おまえを妊娠したい」 「僕を妊娠してください」 と言った台詞の方がぐっとくる

死者を悼む旅を続ける主人公の
なんとなく胡散臭く偽善者めいた印象は最後までぬぐえず
私には「死」に取りつかれた変人としか映らなかった

見ず知らずの他人の死を悼む前に
癌で余命わずかの母のことを
息子の帰りをずっと待ち続ける母のことを
愛情いっぱいそそいできた母(と家族)のことを
少しは考えろ、と言いたい
旅を続ける中で、母が病気で帰りを待っているらしいことを知っても
帰らずにどこの誰だかも知らん人の死を追いかけてんだからね、この男は

偉い人にも金持ちにも貧乏人にもいい人にも悪い人にも
死はおとずれる
そうゆう意味で死は誰にでも平等だと言いたいなら(言いたいっぽい)
天寿をまっとうした病死や老衰死だって同じ死なわけで
そうゆう圧倒的に多いであろう死を無視して
事故や事件や自殺といったショッキングな死ばかりを追ってるのも嫌な感じだ

とはいえ
このおはなしと主人公に吸引力というか抗えない力みたいなものがあるのも確かで
死や死者に引っ張られて、息苦しくて
途中で何度読むのをやめようと思ったことか
あまり精神的によろしくなかったなあ

はちゃめちゃな方が
どーんと突き抜けてる方が
ばーんといっちゃってる方が
単純で豪快なのがいいや、今は
by hammsamm | 2009-06-11 16:28 |